TechnicalReview

世界をかき回す設計ボランティア

#55 時間旅行機

 地球での生活に飽きたので,どこか遠くへ進出しようとする貧困層が現れている.一回きりの人生,せっかく産まれたのだから,未来に行って希望をもって暮らしてみたい.未来がどうなっているかこの目で見てみたいというわけだ.

 一般相対性理論は,重力の大きい時空付近で時間が遅れることを解明した.出発天体より重い天体を旅行すると,軽い天体付近を旅行する場合に比べ,帰還したあともっと未来へ着いている.

 「時間旅行機」は,円盤型の乗り物である.高速に回転するモーターが一定の角速度を超えると,円盤の半径により一定の速度で上昇する.円盤の裏側に高輝度光源を並べ,光圧により宇宙空間で旋回方向を操縦する.

 旅行なので,着地すると元の時刻に戻ることはできない.

 #55では,モーターの高速化と,過去に行く方法を考える.

#54 脈拍時計

 ウォーキングの際,歩数を測る測定器がある.歩いた距離から消費エネルギーを算出,表示し,健康を管理する.腰に装着することで体幹の上下運動を計数でき,人体モデルから運動結果と健康に与える効果を予測できる.

 腕時計を左の甲側につける男性,右の平側につける女性が一般的だ.腕には指の腹で脈拍数を測れる弁脈があり,心拍数や血流を感算することで,血行を整える.自分の身体を意識することで,自意識を適正規模に収める情報も得られる.

 「脈拍時計」は,心拍数と血圧から血流や血行を計算し表示する腕時計である.手首に測定センサーを充てられるようバンドを装着し,変動する体調データを時系列に記録する.記録した情報を管理できるデータベースを個人やクラウドで持つ.

 パニック発作を事前予測し,心を整える.

 #54では,パニック発作の発生機序について紹介し,データを共有することによって判定できる情報について考察する.

#53 事務パスポート

 住民基本台帳では,国民に番号が振られている.ICタグを備えたカードの普及率が低いのは,カードの有用性と個人情報提供の価値がつり合わないためでもある.個人情報を提供するからには,住民に適切な速度の事務サービスを提供してほしい.

 改札をカード一枚で通過できるシステムが普及した.かざすだけで精算でき,通過時にかざしやすい角度までも考慮されている.切符切り作業の手間を省き,改札管理が楽になった.余裕を持って駅務を管理できるようになった.

 「事務パスポート」は,役所仕事の待機時間を減らす台帳カードである.台帳番号と事務処理ソフトウェアを融合し,煩雑な業務をスリム化する.住民は希望する用件を役所で選択し設定するだけで,期待する処理を高速で受けられる.

 事務職の作業を軽減し,職員は各行政区の連携管理等に時間を注げる.

 #53では,各地区に置けるサービススポットを設計し,役所間で業務を融通するシステムを考える.

#52 携帯点滴

 蚊の針に刺されても気づかない人は多い.ヒトの感覚には粗さの閾値があり,それを下回る刺激には感づかないようにできている.これに倣って,刺されても痛くない注射針が発明された.複数本束ねて注入量を増す展開が考えられている.

 点滴システムは場所を拘束する.大きな機構を連れ歩かなければならず,点滴量を調節することはできにくい.一定時間に一定量を滴らせるために,必要な水分を注入しなければならず,適時適剤を注入することは面倒だった.

 「携帯点滴」は,手軽に持ち歩ける点滴である.鞄等で持ち歩け,適時患部に刺すことで,必要な栄養を供給する.患者自身では気づかない症状を事前に予測するアルゴリズムに基づき,音声等の刺激によって使用タイミングを知らせる.

 健常者の栄養補給としても使える.

 #52では,体調情報を取り出す装置を考案し,静音使用へ向けた適切な刺激について考える.

#51 発光舗装

 振動発電は,歩行者の足圧によって電気を発する板の組である.渋谷の交差点に仮設置され,LEDが発光することを実証した.板を挟む電位の差が,収縮と解放を繰り返すことで発熱する.

 横断歩道は,夜暗いときよく見えなくなることが多い.夕暮れの放課後に通学する生徒に,白と黒の縞を見せることは,白か黒かでなびく極端な思考を心理的に刻みかねない.石英等を混ぜて輝く舗装を都市計画に組み入れる地区もある.

 「発光舗装」は,踏むと色が変わる横断舗装である.通学路に振動発電機構を埋め込み,靴跡の大きさや形に応じて,歩くと発光色が変わる.踏む圧力によって,体重と速さのギャップにふさわしい,かっこいい演出を加える.

 大人のためには古風でみやびやかな色で通路を囲む.

 #51では,足跡を自動認識するモジュールを路肩に置くとき車両側の視覚的認識を考慮し,安全なLEDの変色について考察する.

#50 光発電送受信網

 八木・宇田アンテナは,特定の波長を送受信する金属棒である.混信を防ぐために棒を空間的に配置する.生物から発せられる周波数が,受信する周波数帯と等しいとき,生物からの情報が同調して送受信されてしまう.

 光はエネルギーをもつ.太陽光を平面で受けて電磁現象を発生させる効果を利用した電池がある.電子を余計に持たせたり,電子を敢えて少なくすることで,電磁現象を誘導し,電位差を電力として利用する.

 「光発電送受信網」は,金属棒を家屋に張り巡らせることで,情報を電力に変換する.受信した電力は設置者が受け取るか,他家庭に送るか選択できる.発電するためのエネルギー源は太陽光である.

 既存のアンテナにらせん状のコイルを取り付ける等,簡易な工事とする.

 #50では,発電量を増幅する機能を組み立て,私的情報が流出しない仕組みを考える.

#49 オンライン企業

 ノマドワーキングでは働く場所を固定しない.インターネットを利用して働く機会を得る.企業から企業へ渡り歩くと交通費がかかり,事務所賃料も必要である場合が多い.ノマドによって成立する労働分野には偏りがある.

 クラウドファンディングが盛りあがっている.新しい製品のアイデアを実現するために必要な経費を募る一方,完成した製品を送り届ける.異なるアイデアマンが話し合うことは行いにくく,開発者を孤独な状態に置いてきた.

 「オンライン企業」は設計から製造,流通にかけて業務をオンライン化し,在宅勤務でこなせる職を扱う企業である.ものづくりにおいては技術者同士が会議し,既存企業とのパイプを管理表示する.

 最新情報を討議する場や,設計データを販売する機能も付加する.

 #49では,企業に必要な業務要素を抽出し,会議しやすいシステムを設計する.